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病気編 腎臓の病気 急性腎炎/慢性腎炎/IgA腎症/腎不全/尿毒症
●急性腎炎   ●慢性腎炎   ●IgA腎症   ●腎不全  ●尿毒症

腎臓の位置と働き
腎臓は脊柱(せきちゅう)の両側で、位置は第12胸椎(だい12きょうつい)と第2・3腰椎(だい2・3ようつい)にかけての腰の高さにある。働きは、尿をつくり、水分や有毒物質を排泄(はいせつ)し、体液や血液成分を調節する

腎臓の断面
腎臓は被膜で覆われ、すぐ内側に約1.5cm幅の皮質があり、さらにその内側に髄質(ずいしつ)がある

ネフロンのしくみ
糸球体と尿細管を合わせてネフロンと呼ぶ。ネフロンは片側の腎臓に約100万個あって、血液から尿をつくり出す。糸球体は毛細血管のかたまりで、ボーマン嚢に包まれている

年代別発病しやすい腎臓病
腎臓病の種類は、発病した年齢によって、特徴がある。ネフローゼは子供に多く、IgA腎症は思春期から20歳代が中心で、中高年では膜性腎症がふえる

慢性腎炎の進行
血圧や尿の異常も少なく、腎機能も正常に近い潜在期から、適切な治療で治る場合と、何らかの要因で進行してしまう場合とがある

●急性腎炎
 腎臓の糸球体は、血液をろ過し、尿をつくる働きをしています。腎炎はこの糸球体に出血を伴う炎症が起こる病気です。そのなかで、1年以内でおさまるものを、急性腎炎(きゅうせいじんえん)と呼んでいます。
原因 急性腎炎は、かぜ、扁桃炎(へんとうえん)、咽頭炎(いんとうえん)などの上気道感染症がきっかけとなって起こることが多い病気です。
 ほかに、とびひなどの皮膚の化膿(かのう)、中耳炎、蓄膿症(ちくのうしょう)、肺炎、しょうこう熱、膠原病(こうげんびょう)などがきっかけとなって、発病することもあります。
 最も急性腎炎にかかりやすいのは4〜6歳の小児です。思春期、青年期、老年期と、年齢が高くなるにつれて、発病しにくくなる傾向があります。
 また、女性より男性に多い傾向があります。
症状 主な症状は、むくみ、尿の異常、特に血尿、高血圧です。
●むくみ まず顔にあらわれることが多く、朝起きてまぶたのむくみを見て病気に気づくケースがよくあります。症状が重くなると、手足や腹など全身がむくむようになります。むくみがあると、食欲がない、体がだるいなどの症状を伴うことがあります。
●尿の異常 血尿とたんぱく尿としてあらわれます。
 血尿は、尿が暗褐色に濁ることで気づきますが、血液量が少なく、肉眼ではわからないこともよくあります。
●高血圧 初期の症状として、急にあらわれます。その程度によって、頭痛、めまい、吐きけ、どうき、息切れなどを伴います。
 これらの症状は、すべて同時に出る場合と、単独であらわれる場合とがあります。
検査 急性腎炎の診断には、尿、血液、血圧、腎機能などの検査が必要です。
 尿検査では、尿中にたんぱくや赤血球が含まれるかどうかを調べます。
 血液検査では、ASO(抗ストレプトリジン・O)という抗体の量と補体の量とを調べます。ASOは急性腎炎を起こす細菌に対する抗体です。これが血液中にふえていることと、血液の中に補体が減っているかを調べることが急性腎炎と診断する決め手になります。
 腎機能検査は、糸球体機能検査、腎臓への血流量測定、尿細管機能検査の3つに分類できます。これらの検査は病気の診断だけでなく、進行度を調べるのにも役立ちます。
 また、治りが悪い場合は、腎臓の組織を切りとって、顕微鏡で調べる生検が行われることもあります。これは、腎炎を診断するうえで、最も確実な方法です。
治療 腎臓の機能が回復するまでは、安静と保温を守って腎臓を保護し、食事療法によって腎臓に負担をかけないようにすることが大切です。
 むくみが特にひどく、血圧の上昇や血尿がみられるときには、入院して確実に安静を保つのが理想です。保温は血管を拡張させ、腎臓に流れる血液の量をふやすという効果があります。
 食事療法の基本はたんぱく質、塩分、水分の制限です。制限の程度は症状に応じて決められます。
 むくみがひどいときや、尿の量が減っているときは、特に塩分と水分を制限します。また、カリウムの多いバナナやオレンジのような果物、ナトリウムの多いソーダなども同様に控えます。
 腎臓の機能が低下しているときには、たんぱく質の制限が大切です。1日の摂取量を体重1kgにつき0.5g以下に抑えます。それによって不足するエネルギーは、糖質と脂質で補います。
 また、薬物療法としては、抗生物質、利尿薬、血圧降下薬などが病状に応じて用いられます。しかし、今のところ、急性腎炎そのものの特効薬といえるものはありません。
 むくみ、高血圧、尿の異常などの症状がなくなってからも、生活を元にもどすのには、十分な時間をかけるようにします。通院と検査を定期的に続け、病気を慢性化させないことが重要です。
予後 急性腎炎での入院期間は、一般に1〜2か月です。
 自宅療法に切りかえてからも、床を離れる時間は、午前と午後に1時間ずつくらいから始め、だんだんふやしていくようにします。
 職場や学校に行きはじめるのは、発病後3か月後くらいが目安です。最初は半日だけにして、これを2週間ほど続けます。そして、徐々に全日の出勤、登校へと移行していきます。
 たんぱく尿や血尿がわずかでも続く場合は、たとえ腎機能が回復していても、発病から6か月ぐらいかけて、ゆっくりと日常生活を元にもどす、といった指導がなされます。
 水泳や登山などの激しいスポーツは、尿の異常が消え、さらに1年以上たってから始めるようにします。
 急性腎炎は、場合によっては、慢性腎炎に移行することがあります。そのため、予後の過ごし方が大切なのです。
 急性腎炎の治癒率(ちゆりつ)は子供で90%、成人で70〜80%です。年齢が高いほど治りにくくなり、慢性に移行する率も高まります。

●慢性腎炎
原因 腎炎が1年以上続く場合を、慢性腎炎といいます。
 慢性腎炎の発病には2つのパターンがあります。1つは急性腎炎が完全に治らずに慢性化してしまうもの。もう1つは、自覚症状がなく気づかないうちに慢性化しているものです。IgA腎症(後述)は、このような慢性腎炎の主要な病型のひとつです。
 症例としては後者のほうが多く、学校や職場の健康診断、ほかの病気の診断などのときに、偶然発見されることがよくあります。
 かかりやすい年齢は、20〜40歳代です。性別では、女性より男性に多い傾向があります。
症状 腎炎の主な症状である、血尿、たんぱく尿、ときにむくみ、高血圧などがあらわれます。しかし、自覚症状がない場合も多く、症状のあらわれ方も、進行のしかたも一様ではありません。
 慢性腎炎は、症状によって、潜在期(固定期)、進行期、腎不全期の3つに大別することができます。
●潜在期 最も多いのがこのタイプです。血尿やたんぱく尿が出る以外には、自覚症状はほとんどありません。むくみや高血圧もみられません。かぜをひいたり、生活が不規則になったりすると、尿所見が悪化します。
●進行期 進行性で、尿の異常に加えて、高血圧とむくみがあらわれる場合もあります。進行した場合には、肉眼ではっきりとわかる血尿が出ることもあります。むくみは出てもあまり強くありません。病状の進行とともに、血圧はしだいに上昇し、心臓に負担がかかるようになります。同時に腎臓の機能が低下して、腎不全になる危険性もあります。
●腎不全期 腎臓の機能が正常の半分以下にまで低下したのが、このタイプです。貧血がみられるようになり、顔色が悪くなります。さらに進行すると、頭痛、吐きけ、食欲不振がみられ、老廃物を尿中に排泄(はいせつ)できなくなり、また、さらに進行すると、尿毒症の症状があらわれます。
検査と診断 多くの場合、血尿やたんぱく尿の発見をきっかけに、精密検査を受けて正確に診断されます。検査は尿検査、血液検査、血圧測定、腎機能検査、腎生検などです。
治療 潜在期の場合には特別な治療は必要ありません。ふつうに生活しながら、定期的に尿検査や腎機能検査を受けて、異常がないかどうかをチェックします。

 ただし、かぜや疲労から進行期に移行して、病気が進行することもあるので、日ごろから注意するようにします。進行期の場合は、食事療法が必要です。塩分やたんぱく質を制限しますが、症状によって制限の程度は違ってきます。場合によっては、血圧を下げるために血圧降下薬を投与します。仕事量や日常の運動量を抑えなければならないこともあります。
 腎不全期の場合は、きびしい食事療法と安静を守らなければなりません。
それでも病気の進行が止まらず、腎臓が働かなくなってしまった場合には、人工透析(とうせき)などの治療を受けることになります。
 IgA腎症の場合は、根本的な治療法は確立されていません。食事と日常生活に気をつけることが大切です。食事療法は、一般的にはたんぱく質や塩分を減らし、水分を多くとるようにします。日常生活の注意としては、かぜをひいたり過労になりすぎたりしないこと、激しい運動を避けることなどがあげられます。安静の程度は症状によって異なります。

●IgA腎症
 糸球体の中に、IgA(免疫グロブリンAという血清たんぱくの一種)という物質が沈着して、血液をろ過する機能に障害が出るのがこの病気で、慢性腎炎の一種です。IgAが沈着する原因は解明されていません。
 IgA腎症の特徴としては、次のようなことがあげられます。●10〜20歳代の若い人に起こることが多い、●必ず血尿がみられ、一般にたんぱく尿は少ない、●むくみや高血圧があらわれることは少ない、●咽頭炎などにかかったときに、目に見えるほどの血尿が4〜5日続き、自然におさまることがある、●慢性腎不全に進行する例がある。

●腎不全
 腎臓の機能が極端に低下してしまった状態を腎不全といいます。慢性腎炎が完治せずに進行すると、腎不全になることがあります。このように慢性腎炎から移行するケースは、腎不全の半数以上を占めています。
 腎機能が失われ、体液の調節ができなくなると、内分泌機能の異常が起こります。また、末梢神経(まっしょうしんけい)や筋肉、心臓、血液、骨など、体のさまざまな部分に障害があらわれます。
 腎不全になった場合には、厳重な食事制限が必要になります。
 たんぱく質の制限は、腎臓がどの程度機能しているかによって異なりますが、1日に体重1kg当たり0.5〜0.8gを目安とします。腎臓の機能が低下すればするほど、たんぱく質の摂取量を減らしていかなければなりません。
 塩分は1日8gを目安とし、むくみや高血圧があるときには、さらに制限します。これらの症状が強いときには、3g以下にすることもあります。
 尿の量が減り、むくみがあるような場合には、水分のとり方は尿の量によって調節するのが理想的です。水分のとりすぎに注意し、前日の尿量に500ml加えた量を目安とします。
 尿量が多いときには水分をたっぷりとって、脱水症が起こるのを防ぎます。

●尿毒症
 腎不全がさらに進行すると、尿毒症を起こします。尿毒症の初期の症状は、貧血、疲労感、食欲不振、吐きけなどです。そして、しだいに脳細胞がおかされ、動作が緩慢になっていきます。末期では意識障害も出ます。
 腎機能が回復する見込みがない場合には、人工透析を一生続けるか、腎臓移植をしなければなりません。


●腎臓病患者の会 全国腎臓病患者連絡協議会 〒171東京都豊島区目白2−38−2紫山会ビル TEL03−3985−7760。

●毎日1.5tの血液が腎臓を通過  腎臓で血液をろ過し150リットルの尿をつくる。そのうち99%は体内に再吸収され、再利用される。