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病気編 内分泌・代謝異常・栄養障害 糖尿病
インスリンの働き
インスリンは、膵臓(すいぞう)にあるランゲルハンス島から分泌される。インスリンは、血液中のぶどう糖をエネルギーに変える働きがある

糖尿病発病のメカニズム
インスリン依存型は、ウイルス感染などによる膵臓の機能低下と遺伝的な要因が関連している。非依存型は、遺伝的要因を基礎に肥満やストレスで起こる

糖尿病の合併症
糖尿病そのものよりも、全身に引き起こされる合併症が恐ろしい。生命がおびやかされるので、合併症予防に努めることが大切

糖尿病の人の生活上の注意

原因
 糖尿病は、血液中のぶどう糖濃度が高くなり、尿に糖が出る病気です。血液中のぶどう糖は、全身の細胞を活動させ、体を健康に保つのに必要なものです。ただ、その量が一定範囲を超えてしまうと、血管に障害を起こすといった、よくない影響が出てくるのです。
 血液中のぶどう糖濃度を血糖値といいます。この血糖値をコントロールしているのが、インスリンというホルモンです。インスリンは、血液中からぶどう糖を細胞内にとり込み、エネルギーに変える働きをしています。
 インスリンの分泌が不足したり、作用発現が不十分になると、ぶどう糖はエネルギーとして十分に利用されず、血液中にとどまります。そのため、血糖値が上がり、ついには尿に糖が出るようになります。
 糖尿病は現在ふえつづけている病気です。最近では、10年間に約2倍に増加した、という調査結果もあります。日本では600万人以上の人が糖尿病にかかっているといわれています。これは人口の約5%を占めています。
 このように糖尿病がふえたのは、食生活の欧米化(高たんぱく、高脂肪、高エネルギー)、運動量の減少、ストレスの増加などが影響していると考えられます。

糖尿病の種類
 糖尿病には、インスリン依存型と非依存型の2つのタイプがあります。
インスリン依存型 インスリンの分泌が不足するために起こる糖尿病で、糖尿病全体の約3%がこのタイプです。15歳以下の子供や若い人に多いことから、若年型糖尿病とも呼ばれました。肥満やストレスとはあまり関係がありません。ウイルス感染や自己免疫により、膵臓(すいぞう)の機能が衰えるために起こると考えられています。発病が突然であることも特徴のひとつです。
 治療にはどうしてもインスリン注射が必要になるため、インスリン依存型と呼ばれます。
インスリン非依存型 近年急激に増加しているのはこのタイプの糖尿病です。糖尿病全体のおよそ95%を占めています。40〜50歳代を中心に、中高年になってから発病する場合が多く、成人病として問題になっています。
 インスリンの分泌が徐々に悪くなったり、インスリンの作用が不十分になって起こります。発病のしかたもゆっくりです。原因には、遺伝的素質、肥満、ストレス、妊娠、運動不足などがあげられます。
 治療に必ずしもインスリン注射を必要としないことから、インスリン非依存型と呼ばれます。

症状
 インスリン依存型の糖尿病は、ある日突然はっきりした自覚症状が出て発病します。しかし、インスリン非依存型の糖尿病は、病気の進行がゆっくりなので、初めはほとんど自覚症状がないのがふつうです。何年も気がつかないこともよくあります。
 病気がある程度進行すると、次のような自覚症状が組み合わさって出てきます。●だるい、●疲れやすい、●のどがかわく、●排尿の量や回数がふえる、●食欲があり、すぐ空腹感を覚える、●食事量のわりに体重が減少してくる。
 こういった症状があるにもかかわらず治療しないで放置したり、治療が不十分だったりすると、糖尿病性昏睡(とうにょうびょうせいこんすい)を起こすことがあります。血糖値が400mg/dl以上にまで上昇し、血液が酸性に傾いて意識を失ってしまうのです。
 昏睡状態に陥る前には、強いのどのかわき、脱力感、肌の乾燥、吐きけなどの症状が出ます。

合併症
 糖尿病の発病後、たいしたことはないと放置したり、治療をおろそかにしたりすると、次のような合併症を起こします。
糖尿病性網膜症 血糖値の高い状態が続くと、眼底にもろくなった毛細血管があらわれ、これが切れて眼底出血を起こすのが糖尿病性網膜症です。発見や手当が遅れると、失明することもあります。
糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう) 腎臓の毛細血管に障害が起き、血液をろ過する機能が低下する病気です。老廃物が体外に排泄(はいせつ)されなくなって、尿毒症や腎不全になります。
糖尿病性神経障害 運動神経、知覚神経、自律神経にそれぞれ次のような障害があらわれます。
●運動神経障害 手足が動きにくくなる。
●知覚神経障害 手足がしびれる、神経痛が出る、熱さや冷たさを感じなくなる。
●自律神経障害 立ちくらみ、発汗異常、ひどい下痢や便秘、尿がたまっているのに尿意がなく排尿できない、インポテンツ。
その他の合併症 糖尿病による血管の障害が、脳や心臓の血管にあらわれると、脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)になる可能性も高くなります。
 また、糖尿病になると、細菌に対する抵抗力や免疫の機能が低下します。そのため、肺炎などの感染症にかかりやすくなり、傷も化膿(かのう)して治りにくくなります。同様の理由で歯槽膿漏(しそうのうろう)も起こりやすくなります。
 足の小さな傷がもとになり、指先が腐る壊疽(えそ)を起こすこともあります。神経が鈍っているため傷に気づかず、そのうち化膿菌に感染してしまうのです。

検査と診断
 糖尿病の検査には、尿に糖が出ているかどうかを調べる尿検査と血液中のぶどう糖濃度を調べる血糖値検査とがあります。
尿糖検査 尿に糖が含まれているかどうかを調べます。症状が軽い糖尿病では、食前の尿には糖が出ないことがあるので、食後2時間ほどたったときの尿で調べます。この検査で尿糖が陽性と出れば、糖尿病の可能性があるので、次には血液検査で血糖値を調べる必要があります。
自分でできる尿糖検査 薬局で売られている試験紙を使って、自分で尿検査を行うこともできます。紙コップなどに尿をとり、試験紙を浸して色の変化を見ます。その変化のぐあいで、陽性かどうかがわかります。しかし糖尿病があっても尿糖が陰性のことがあるので、これだけで自己診断するのは危険です。
血糖検査 血液中のぶどう糖濃度を調べる検査です。血糖値の検査には、ごく一般的な血糖検査とぶどう糖を飲んでから行うぶどう糖負荷試験とがあります。
 一般的な血糖検査は、朝の空腹時に行います。このときの値が120mg/dl以上で、それにのどのかわき、多尿、頻尿(ひんにょう)といった症状があれば、糖尿病を疑います。
 ぶどう糖負荷試験では、よりくわしい測定がなされます。空腹時の血糖値を調べたあと、75gのぶどう糖を飲み、1時間後、2時間後の血糖値を順次調べていきます。
 空腹時の血糖値が140mg/dl以上であるか、ぶどう糖投与2時間後の血糖値が200mg/dl以上のときに、糖尿病と診断されます。食事内容に左右されることがないので、一般的な検査にくらべ、より精密な診断が可能になります。

治療
 糖尿病は現在のところ、完全に治すことはできない病気です。しかし、適切な治療を行っていれば合併症を起こすこともなく、ふつうに生活することができます。
 治療の基本は、食事、運動、薬です。特に糖尿病の大部分を占めるインスリン非依存型糖尿病の場合は、とりわけ食事が大切です。
食事 ポイントは、摂取エネルギ−を必要最小限に抑えること、栄養のバランスをとることです。これを基本にして次のような点を心がけます。●食事の量は少なめだが、食品の種類はふやす、●ゆっくりと時間をかけて、よくかんで食べる、●食物繊維を多くとる、●塩分を控えめにする。
 摂取エネルギーの制限や、栄養素の配分などは、医師の指導を受け、その範囲で自分の好みに合った献立を工夫します(→「食べてなおす」)。
運動 運動をすることによって、筋肉中でぶどう糖がエネルギーとして消費されます。そのため、血液中のぶどう糖が筋肉へ入りやすくなり、血糖の上昇を抑えることができます。
 方法としては、自分に合った、いつでもどこでもできるような運動を選びます。そして、それを根気よく続けることが大切です。体に負担をかけるような無理な運動は好ましくありません。朝夕30分の散歩程度の運動が適当です。
 合併症を起こしている場合や、病状によっては注意が必要です。
 食事療法や運動療法だけでは血糖値をコントロールしきれなくなったときに、薬による治療が行われます。血糖降下剤によるものと、インスリン注射によるものとがあります。
●血糖降下剤 一般的に用いられているのは、スルフォニール尿素剤という内服薬で、これを食事の直前か直後に服用します。どの薬をどれだけの量用いるかは、血糖値などから医師が判断します。
●インスリン注射 インスリンは作用時間などによって、何種類かに分けられています。どの種類のものをどれだけの量用いるかということは、病状によって主治医が判断します。
 糖尿病に対するインスリン注射は、膵臓(すいぞう)のホルモンであるインスリンの不足を補うためのものです。毎日続けて注射しなければならないので、患者自身による自己注射が許可されています。毎日同じところに打たず、3cmほどずらして注射するようにします。注射部位として適当なのは、大腿(だいたい)、腕、腹部、臀部(でんぶ:おしり)などです。
 いずれにしても薬物による治療を継続して受ける場合には、血糖値の下がりすぎに注意しなければなりません。空腹時で120mg/dl以下、食後(あるいはふどう糖投与後)2時間でl50mg/dl以下あたりの値を保つのがじょうずなコントロールといえます。

予防
 原因になりそうな要素をとり除くことがポイントです。食事でエネルギーをとりすぎない、運動を十分に行う、ストレスをため込まない、といったことが大切です。
 特に、家族や血縁に糖尿病の患者がいる人は、遺伝的要素をもっている可能性があるので、より注意が必要です。
合併症の予防 なんといっても、まず血糖値を正常値近くに保つことが大切です。食事、運動、薬などで血糖をコントロールすることが、合併症の予防にはいちばんです。
 また、足の壊疽(えそ)を防ぐために、常に足を清潔にしておきましょう。やけどから化膿(かのう)して壊疽を起こすこともあるので、灸(きゅう)をすえるのも厳禁です。



ぶどう糖負荷試験(単位mg/dl)

ぶどう糖を飲む前 飲んで1時間後 2時間後
正常型 110未満 160未満 120未満
糖尿病型 140以上 200以上
境界型 正常型でも糖尿病型でもない
ぶどう糖負荷試験は、尿に糖が出たときに精密検査として行われ、正確な診断のよりどころとなる。糖尿病型は、表の2つの値のいずれかを満たすものをいう


必要な定期検査
●尿検査(尿糖、尿ケトン体、尿たんぱく)
●眼底検査
●腎機能検査
●血圧検査
●血液生化学検査(血糖、へモグロビンA1、またはA1c、血中脂肪)
●胸部X線検査
●心電図
合併症予防には、上のような定期検査を必ず受けること

●自分で血糖値を測る 血糖値の変動幅が大きく、頻繁(ひんぱん)な測定が必要な人のために、携帯用の血糖測定器が何種類か市販されている。

●糖尿病患者の会(社団法人日本糖尿病協会) 全国の病院、医院、クリニック単位で組織されている。個人でも可。TEL03−3437−1388。