現代医学

病気編 呼吸器の病気
現代医学でなおす
●気管支拡張症  ●肺気腫  ●肺炎  ●肺結核  ●肺線維症  ●肺水腫  ●胸膜炎
〈コラム〉古くて新しい検査、X線撮影

●気管支拡張症
 気管支の壁が弱くなり、拡張したままもどらなくなったのがこの病気です。
原因 先天性の場合もありますが、ほとんどは後天性です。
 乳幼児期の肺炎、百日ぜき、はしかの後遺症として起こる場合や、大人になってからの肺結核、肺炎などに続いて発病する場合があります。また、蓄膿症(ちくのうしょう)の人に起こりやすい傾向もあります。
症状 せきとうみのようなたんが主な症状です。軽症の場合は、かぜをひくとせきやたんがひどくなり、悪臭のあるたんが出ることがあります。重症になるほどたんは多くなり、毎朝起きたときに、黄色いうみのようなたんが大量に出ます。たんに血がまじったり、喀血(かっけつ)したりすることもあります。
 肺炎などを併発すると、息切れや呼吸困難が起きたり、のどがゼイゼイ鳴ったりします。
診断 胸部X線検査のほか、CT検査が大切で、ときには、気管支造影法で拡張の位置や程度を確かめることもあります。たんの細菌学的検査を行ったりします。これらの検査で、肺結核、肺線維症、慢性気管支炎などの病気との区別もつきます。
治療 たんを出して、慢性の感染を防ぐことが大切です。起床時に体位性ドレナージでたんを出す習慣をつけます。たんが多いときは、就寝前などにも行い、1日に2〜4回くらい実行します。この方法で、呼吸がかなり楽になります。
 細菌に感染して症状が悪化したときには、抗生物質や去たん剤による治療が行われます。

肺気腫の肺胞
肺胞の境界である肺胞壁が破れて、肺胞どうしがくっつく。大きな袋のようになった肺胞には弾力性がなく、ふくらんだままになる

●肺気腫
 肺を組織している肺胞の細胞壁がこわれて境界がなくなり、肺に空気がたまってふくらんだ状態になる病気です。
 喫煙している50歳以上の男性に多く、近年増加する傾向にあります。
原因 明確にはわかっていません。肺胞がこわれやすくなる原因には、●肺組織の老化、●喫煙習慣や大気汚染、●急性の炎症や長期の慢性気管支炎、などが考えられます。
症状 初めにあらわれる症状は息切れです。まず、激しい運動をしたときや、階段を上がったときなどに、息切れが起こります。やがて安静時にも呼吸困難が起こるようになります。
 70〜80%が気管支炎を併発します。そのため、せきやたんが出たり、呼吸のときゼイゼイ音がしたりします。
 また、この病気はやせ型の人に起こりやすいのですが、病気が進行すると、胸のあたりだけがビール樽のようにふくらんできます。体重はしだいに減ってきます。
検査 X線検査と、肺機能検査を行います。X線検査では、肺にある多量の空気のために透過性が増し、肺全体が大きくふくらんでみえます。
 肺機能検査では、肺活量、1秒率などを調べます。1秒率とは、思いきり息を吐き出した最初の1秒間で、肺活量の何%を吐き出せるかを調べる検査です。正常な人なら1秒率は70%以上ですが、肺気腫(はいきしゅ)の人だと55%以下になっています。また、口から15cmほど離したマッチの火を吹き消せるかどうかで、簡単にチェックすることもできます。
治療 一度こわれた肺胞壁は、元にはもどりません。したがって、この病気は完治しないのですが、早期の治療で進行をくい止めることはできます。
 呼吸を楽にするため、腹式呼吸や呼吸リハビリテーションが役に立ちます。禁煙し、適度な運動を行い、空気の汚れや乾燥などを避けるようにします。かぜは悪化の原因にもなるので、インフルエンザの予防接種を受けます。

大葉性肺炎と気管支肺炎
右肺には3つ、左肺には2つの肺葉がある。大葉性肺炎では炎症が肺葉全体に広がる。気管支肺炎の炎症は肺葉を構成する小さな単位である小肺葉にとどまっている

●肺炎
 肺に起こった炎症を総称して肺炎といいます。化学療法が進歩して治りやすくなってきましたが、まだ死亡率は高く、油断のできない病気です。
原因 肺炎は、細菌やウイルスなどの感染で起こります。特に体力が落ちている人や、乳幼児、老人などは、抵抗力が弱いために、肺炎を起こしやすい状態になっています。
 肺炎は、原因によって細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎などと呼ばれます。
 細菌性肺炎は、炎症の起こる範囲によって2種類に分けることができます。炎症が肺の大葉まで広がるのが大葉性肺炎、その他のものを気管支肺炎といいます。
 感染以外の原因で起こるものに、食べ物が気管に誤って入ったために起こる燕下性肺炎(えんげせいはいえん)があります。これは老人によくみられます。
症状 最初にあらわれる症状は、寒け、せき、発熱などです。突然症状が起こる場合には、熱は38〜40度の高熱になります。脈拍数も多くなり、呼吸は速く浅くなります。胸が痛み、激しいからぜきに苦しみます。気管支肺炎の場合は、しばしばゆるやかに発症します。
 せきがおさまると、粘りのあるうみのようなたんが出ます。たんの色はしだいに濃くなり、血の色からさび色にまで変化します。
 進行は急激なことも多く、幼児や老人にはその傾向がより強くみられます。
 ウイルス性肺炎の症状は、頭痛、発熱、筋肉痛、全身のだるさなどが主で、かわいたせきがあらわれます。たんはみられないか、あっても軽いものです。
 マイコプラズマ肺炎では、かぜに似た症状があらわれます。せきがひどくなりますが、たんは伴いません。
診断 打診、聴診、たんの観察でおよその診断はつきます。さらに、X線検査、たんの細菌学的検査などでくわしく調べます。しばしば、白血球が増加します。
治療 早期に治療を開始することが重要です。
 まず化学療法として、病原菌に合わせて、抗生物質が投与されます。ウイルス性肺炎では、ウイルスに対する薬がないので、対症療法を行いながら、抗生物質で二次感染を防ぐ方法がとられます。
 こうした化学療法と同時に、絶対安静、保温、保湿を守ります。熱や汗で体内の水分が奪われるので、水分の補給も大切です。
 食事は、重湯、スープ、果汁などから始め、食欲の回復に応じて消化のよいものを食べ、体力をつけていきます。
 2週間くらいで治るのがふつうです。症状がおさまっても、肺の炎症が残っていることがあるので、しばらくは無理をしないようにします。
予防 かぜをひかないことと、ひいてしまったら早めに治すことが、最大の予防法です。特にかぜの流行する時期は、乳幼児や老人の健康に十分注意します。


肺以外に起こる主な結核
結核菌は、肺だけでなく全身の臓器、骨などに感染する。最近は少なくなったが、現在もみられる肺外結核の主なものを示した。脊椎カリエスについては→「脊椎過敏症/脊椎カリエス」

●肺結核
 肺結核は、結核菌に感染して起こる伝染病です。現在では死亡率はぐんと減っていますが、患者の数はまだ多く、軽視することはできません。
原因 結核菌を吸い込むことが感染の原因です。結核菌は、結核患者のせきやくしゃみによって空気中に飛び散り、ほこりなどにまじって浮遊しています。
 ただし、菌を吸い込んでも、すべてが発病するわけではありません。ツベルクリン反応が陽転していて、体に免疫力があれば、感染しても発病はしないのです。
 しかし、体が弱って抵抗力が落ちていたり、菌が濃厚だったりすると、肺胞へ達した菌が繁殖して、肺結核を発病させます。
症状 病気の潜伏期間が長く、徐々に進行するので、初期には自覚症状がほとんどありません。
 やがて、せき、たん、倦怠感(けんたいかん)、食欲不振など、かぜに似た症状と、38度くらいの発熱もあります。こうした症状があらわれたときには、結核は中程度かそれ以上に進行していると考えられます。
 ほうっておくと進行は早く、たんがふえ、うみがまじるようになります。体重減少、呼吸困難、喀血などもみられるようになります。体力がなくなり、ほかの病気に対する抵抗力もだんだん落ちてきます。
検査と診断 たんの細菌学的検査と胸部X線検査が行われます。
 たんの検査では、結核菌の有無や、どんな薬が効果的かを調べることができます。
 X線検査では、通常の写真撮影のほか、断層撮影や気管支造影も行い、病変の場所や大きさなどをくわしく調べます。
 そのほか、ツベルクリン検査でも感染がわかります。ただし、BCG接種を受けた人については、判断できないこともあります。
治療 化学療法を中心に治療を進めます。
 抗結核薬として、ストレプトマイシン、ヒドラジッド、リファンピシン、エタンブトールなどがあります。ほとんどの肺結核は、これらの薬で治療可能です。服用は1年以上続けます。
 最近では、入院せずに治すこともできるようになりました。病状によっては入院が必要ですが、昔のように長期療養をするケースは少なくなっています。
 化学療法が進歩したので、安静などの注意も、以前ほどうるさくいわれなくなりました。しかし、治癒(ちゆ)を早めるのに安静は効果があります。特に症状が激しいときは、安静を守ることが必要です。
 栄養のある食事で抵抗力をつけることも、昔ほど重要視されていません。バランスのとれた食生活を心がけ、偏食を避ける程度で十分です。
 化学療法で効果がない場合は手術をしますが、最近ではほとんど行われません。
 大切なのは早期発見・早期治療なので、定期的に健康診断とX線検査を受けるようにします。
 予防として、ツベルクリン反応が陰性であれば、BCG接種を受けることが大切です。
 また、患者は菌をまき散らさないように、●寝室を別にする、●日中はマスクをかける、●たんは消毒してからトイレに流す、●乳幼児と接触しない、などの注意を守るようにします。

●肺線維症
 肺組織の中の線維がふえる病気です。難病の特定疾患に指定されています。
原因 原因としては、●肺結核や強皮症などの膠原病(こうげんびょう)、●放射線障害、●塵粉(じんぷん)、●薬物、アレルギーなどが考えられます。
 なかには原因のわからないものもあります。
症状 肺が伸縮しにくくなり、しだいに小さくなって、機能が低下します。
 症状は、呼吸が浅くなる、息苦しい感じがする、といったことで始まり、せきやたんなど、かぜのような症状があらわれます。
 進行すると、安静時でも呼吸困難になり、チアノーゼやむくみが起こります。
 このような状態を肺性心といいます。
 ふつうは、ゆっくりと進行しますが、急激に悪化して非常に危険な状態になることもあります。
治療 初期にはステロイド剤が効果的な場合があり、進行した場合には、対症療法として、酸素吸入、抗生物質や強心薬の投与などが行われます。

●肺水腫
原因 心臓の左心室から血液が送り出されなくなり、肺の中に血液がたまった状態になるのが肺水腫(はいすいしゅ)です。
 心臓の病気が悪化して機能が低下するために起こります。尿毒症や、塩素などの薬物が原因のこともあります。
症状 急激な呼吸困難やチアノーゼが起こります。激しいせきが出て、呼吸のたびにゼイゼイと音がします。血液のまじった泡状のたんが大量に出ます。
 発作の続く時間は数分から数時間で、ほうっておくと命にかかわります。
治療 緊急に医師を呼びます。医師を待つ間は、寝ているより、上体を起こして座っていたほうが呼吸が楽です。酸素を吸うことで、症状が軽くなります。


胸膜の位置
胸膜は非常にうすい膜で、これが二重になって肺を覆っている。膜と膜のすき間を胸膜腔(きょうまくくう)という。胸膜腔には漿液(しょうえき)が入っているので、胸膜は、なめらかに動くことができる。胸膜炎にかかると、最初は胸膜腔に液体がたまり、やがてこの2枚の胸膜が癒着(ゆちゃく)してしまう

●胸膜炎
原因 肺の表面と胸壁の内面を覆う袋状の胸膜{以前は肋膜(ろくまく)と称した}の炎症です。結核が原因の場合もあり、老人では肺がんが原因となって発病することがあります。
症状 発熱と胸の痛み、せきが主な症状です。
 初めは全身の倦怠感や食欲不振があります。
 結核が原因のときは、微熱が続いたあとで、38度くらいの発熱がみられます。
 からぜきが出て、片方の胸が痛みます。深く呼吸するときも同じように痛みます。横になるとき痛むほうを上にすると少し楽になります。
検査と治療 胸膜にたまった水を、顕微鏡で調べたり、これを培養する細菌学的検査を行ったりします。検査によって原因をつきとめ、その原因に応じた治療が進められます。

●X線被曝量(えっくすせんひばくりょう)  集団検診や病院での検査で浴びる量は、まず心配ない。ただし、妊娠している女性は、腹部でなくとも避けるべき。

●肺に穴があく自然気胸 肺がパンクしてしまう病気で、突然胸が痛くなる。背の高い若い男性に多く、最近ふえている。早めに病院へ。