基礎知識編 PART1 民間療法入門
民間薬のすすめ
民間薬は貴重な経験の積み重ね
 民間薬は、世界中どこの国にも、いつの世にもあって、昔から伝わってきているものです。
 諸国に今でも伝えられている種々の民間薬は、経験の積み重ねであって、もとより治療の体系は整っておらず、それぞれの薬の効果の程度も明らかではなく、個々の疾病に対応する民間薬も明らかではありません。

安全性が高く使いやすい
 しかし、実際にこれらの民間薬を使ってみると、民間薬の効用は、場合によって十分評価するに足るものです。
 私は、実際に患者さんに対して民間薬を適宜、長期に用いています。薬効の信頼性は多少劣るものの、その安全性の高さは通常用いている西洋医学の薬や漢方薬の比ではありません。
 医薬品に対して十分な知識をもっていなければ手を出せないということではないのです。

専門医の診断は必要
 ただし、次の点は十分に留意する必要があります。自覚症状が軽い場合でも、重い病気が隠れていることがあります。民間薬で症状が改善しても、内にこもっているたちの悪い病気(たとえばがんなど)は少しもよくなっていないことがあります。そして、病気はそのまま進行してしまうのです。体の具合が悪いときには、その症状から考えられる病気を調べてもらうことは必要なのです。この点を十分わきまえたうえで、民間薬を使ってみましょう。

漢方よりずっと簡単
胃炎の治療例
 22歳の女性が、胸やけ、胃の痛みなど胃の異常を訴えて、来院しました。
 胃のX線検査の結果、潰瘍(かいよう)などはなく胃のひだが大きく太くなっていました。症状からみても、肥厚性胃炎です。
 漢方的な所見でいえば、舌には中程度の白い苔(こけ)、みぞおちの下には広く圧痛があり、同時に、その部分の筋肉が緊張していました。
 もう1例は26歳の男性です。この患者さんの場合も、X線検査の結果、肥厚性の胃炎であると診断できました。
 舌に乾燥した白苔があり、みぞおちから多少右寄りに、圧痛と筋肉の緊張があるのも、先の例の患者さんと似ていました。
 この2例は、ともに同じ処方の漢方薬が適応するとの判断ができるわけですが、この程度の症状には、複雑な処方の漢方薬を用いるまでもありません。まず食餌療法と規則正しい生活、それでも症状の改善がみられない場合にはセンブリを続けて用いてみるとよいのです。センブリは、胸やけ、すっぱい液の逆流、しゃっくりなどの酸症状があるときに使います。

症状に対応する薬草
 痔疾の治療例
 日ごろ便秘がちで、下剤を飲まないと、2〜3日は通じがないという49歳の男性です。痔(じ)は外痔核で、炎症を起こしているように腫(は)れていました。前の晩に、酒を6合ほど飲んでから痛みが激しくなったといって、来院しました。
 この患者さんの場合は消炎的に働く局所的な治療剤がよいので、塗布剤と浴剤をかねてイチジクを用いました。
 一方、内痔核に悩む50歳の女性の患者さんは、出血のために貧血を起こしていました。この場合は、止血作用のある薬草が必要なので、煎じ薬(せんじやく)と浴剤をかねて、ヨモギを用いました。

家庭での手当には身近な薬草を
 ここにあげた例のほかに、尿路の異常にウラジロガシ、高血圧症に柿の葉、ゲンノショウコを胃腸病に処方するなど、単独であるいは漢方薬の煎剤に加えて用い、民間薬は治療成果を上げています。
 家の庭や野原には、薬効のある野草がたくさん生えています。必要に応じて、それらを摘んできて、あるものは乾燥させて、さまざまな病気に用いてきたものです。西洋医学ではほとんど問題にされていませんが、軽い病気やけが程度で、家庭で手当しようとするならば、身近な薬草を使ってみてはいかがでしょうか。