基礎知識編 PART1 漢方療法入門
漢方薬の飲み方
漢方薬を作る

薬の煎(せん)じ方
 生薬を漢方薬店で買い、自分で煎じ薬を作ることもできます。
 1日分と指定された分量の生薬を容器に入れ、500ml(コップに3杯ぐらい)の水を入れ、弱火で1時間ぐらいかけて200mlほどに煮つめます。
 その間、容器にふたをしないで煎じます。
 早く煎じたいからと、最初から湯で煮たり、強火で煮たりすると、薬の成分を全部抽出することができません。
 火からおろしたらすぐ、煎じ汁をこして、別の容器に移しておきます。ガーゼ袋を作り、それに生薬を入れて煮てもよいでしょう。
煎じるための容器は土びんか土鍋がベスト。なければ、ほうろう鍋かアルミ鍋でもよい

1日分ずつ作るのがよい
 一度に大量に作らず、毎日その日の分だけ煎じ、その日のうちに飲みきってしまうほうが効果があります。どうしても残った場合には、夏期以外であれば、翌日に飲んでもかまいません。

作りおきする場合は
 数日分を作りおきする場合には、細菌などが発生するといけないので、必ず冷蔵庫に入れて保存してください。
 薬酒などは、広口びんに入れて、冷暗所に置きます。
 作りおきした漢方薬を飲む場合には、飲むときにもう一度火にかけて温めます。1回分を小さな鍋などに移して温めるとよいでしょう。前述したように、煎じ薬は温かい状態で飲むのが原則だからです。特に、虚弱体質の人や下痢症状のある人、熱のある人は、冷たいまま飲まないよう注意してください。
 なお、漢方生薬は保存法が悪いと品質が低下します。新しくないと薬効のなくなるものや、虫がつきやすいものもあります。紙袋に入れて風通しのよいところに下げ、ときどき日に当てるなど、保存のしかたに注意しましょう。
 漢方薬は、あくまで薬です。安易な気持ちで扱うと、思わぬトラブルが起こることもあります。基本的には素人療法は禁物であることを常に頭において慎重にしてください。

生薬を入れた薬酒は冷暗所に

煎じ薬の保存は冷蔵庫で

漢方薬を買う
漢方にくわしい薬局で買う
 漢方薬を置く薬局は9割にものぼりますが、ほとんどは薬の種類も少なく、熱心でもありません。ただ1割ぐらいの薬局では、漢方をしっかり勉強した薬剤師がおり、「漢方相談コーナー」などを設置し、薬も100種ほど用意しています。
 こうした店を探し、漢方にくわしい薬剤師と相談のうえで、薬を購入するのがよいでしょう。

1日分あるいは2週間分を買う
 漢方は、急性疾患なら1日、慢性疾患では2週間ほどで何らかの効果があらわれます。もしそれ以上薬を飲んでも効果がないようなら、転方(ほかの薬にかえる)する必要も出てきます。
 転方のことを考えると、とりあえず急性なら1日分、慢性なら2週間分を買えばよいでしょう。1日分が無理なら、せめて分包にしてもらいます。

有効期間は?
 調剤や保存のしかたにもよりますが、アルミシート入り市販薬は、3〜5年は品質低下しません。
 ただ、病院のものは吸湿しやすい紙のシートに入っているため、注意が必要です。吸湿してかたまったようなものはやめ、日にちのたったものは一応医師に見せてから服用するようにしてください。

薬代は1日300〜500円
 飲みやすくて買いやすい漢方エキス剤は、1びん2000〜4000円、1日分にすると300〜500円ぐらいになります。
 生薬はすべて中国などから輸入しますし、ほとんどが野生のものを採取しますから、見方によっては安いともいえます。
 ただ長期間服用するようなら、保険診療してくれる漢方医に受診するか、処方せんを出してもらうほうが経済的かもしれません。

効く漢方薬はおいしい
 健康な人が飲めばまずいのに、その薬と証(しょう)がぴったり合った場合には、おいしく感じられることがあります。証に合った薬は比較的飲みやすく、気持ちよく飲めるものです。
 初めのうちは飲みやすかったのに、途中から急にまずく感じるようになることがあります。これは、証が変わったことを示しています。
 証が変わったら、今度はその証に合った薬を用いますが、薬の飲みやすさが、薬をかえる時期の目安と考えてもよいでしょう。

漢方薬を飲む
効果の上がる飲み方
[1]空腹のときに飲む
 漢方薬は、いちばん吸収率のよい空腹時に飲みます。
 これは、あくまで薬の効果をより有効にするためなので、空腹時に服用すると気持ちが悪くなる人の場合などは、食事の直前や食後でもかまいません。
[2]1日3回か2回に分ける
 漢方薬の1日分は、1日3回飲むことを前提としています。無理ならば2回でもかまいません。そのときには、1回に1日分の半分、つまり1回半分を飲みます。
 一度にすべて飲むと、なかには中毒を起こす薬もあります。飲み忘れた分を翌日にまとめて飲むのもいけません。一定量を定期的に服用するようにしましょう。
[3]原則的には温めて飲む
 基本的にはエキス剤は白湯(さゆ)といっしょに飲んだり、白湯に溶かして温めて飲みますが、吐きけや嘔吐(おうと)が激しいときや、鼻血や吐血など出血があるときは例外です。温めて飲むと症状が重くなるので、水で飲みます。
[4]食事にも注意
 治療中は、消化に体力を使いすぎないよう、油っぽいものは避け、少なめに食べます。そのほか、体力のない人は生ものや冷たいものを避けることや、旬(しゅん)の食べ物を食べることも早期回復に役立ちます。
[5]漢方薬の合方と現代医薬の併用
 いずれも医師の指示が必要です。漢方薬を合方(ごうほう:一度に2種の薬を飲む)するのは、少なくとも素人は避けてください。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、虚証タイプ(体力のない人)に向く薬。これを実証タイプでのぼせぎみの人(体力のありすぎるタイプ)が用いると、めまいや頭痛、耳鳴り、肩こりが悪化する

漢方薬にも副作用がある
 漢方薬に副作用がないといわれるのは、漢方治療の長い歴史と経験から、作用の強い生薬を入れる場合には、それと反対の作用をする薬を微妙にまぜ合わせているからです。
 ただし副作用がまったくないわけではありません。証のまったく合わない薬を服用し、発汗や下痢が止まらなくなるなど、ときに思わぬトラブルが起こることもあります。これは、毒性の強い生薬の入った薬を用いることで起こることが多いのです。
 次のような生薬の含まれた漢方薬は、長期間飲みつづけたり、一度に大量に飲まないなど、慎重に服用してください。
●附子(ぶし)……トリカブトの根で、正しく使用すれば強心作用や鎮痛作用がありますが、吐きけやのぼせ、どうきが起こることもあります。
●大黄(だいおう)……下剤・解毒効果がありますが、飲みすぎると下痢が止まらなくなることがあります。
●甘草(かんぞう)……鎮痛・消炎作用をもっています。誤って使用すると、むくみが出ることもあります。
●麻黄(まおう)……ぜんそくの治療によく用いられます。重度の心臓病の人が用いると、狭心症を起こすことがあります。

●漢方薬酒 薬の形を示す漢字の1つ「醴(れい)」は薬酒のこと。人参酒(にんじんしゅ)はじめ、地黄酒(じおうしゅ)、鹿茸酒(ろくじょうしゅ)、枸杞酒(くこしゅ)、五加皮酒(ごかひしゅ)など多種多様。

●瞑眩(めんげん) 漢方治療で快方に向かう途中にまれに起こる、吐き下しなどの激しい症状のこと。1〜2日で治るので、まず心配はない。