基礎知識編 PART1 漢方療法入門
漢方が得意とする分野
病名より症状が優先する
 西洋医学では、さまざまな検査をし、病名をはっきりさせたうえで、初めて治療に入ります。
 しかし漢方では、病名を知る必要はありません。漢方の処方は、病名ではなく、あくまでも症状が決め手だからです。
 しかも、胃が痛む、頭痛がするといった局所的なものだけではなく、汗が出やすい、貧血がある、体がだるいなど、体全体にわたる多様な症状を考慮します。
 症状だけに照準を合わせるため、胃腸病に効く漢方薬が、肝臓病にも効くという、一見不思議なこともありえるのです。

慢性病疾患と半健康に威カを発揮する
 一般に、漢方は慢性病によく効くといわれます。急性疾患が、漢方でも現代医学でも比較的治りやすいのに対し、慢性病は治りにくいやっかいな病気です。それが漢方治療で、あるいは漢方と現代医学の併用で治る例が多いということは、やはり漢方は慢性病に威力を発揮するといってよいでしょう。
 漢方のもうひとつの得意分野は、倦怠感(けんたいかん)や肩こり、不眠、冷え症といった、病気ともいえない病気です。現代医学の病院は、診察してもらっても、何も異常がなければ処置法もありません。漢方は、半健康状態といわれるこれらの症状にも、非常に効果的です。
 細菌性疾患のように、現代医学が勝っている分野もあれば、現代医学ではお手上げの病気を漢方で治療できることもあります。漢方も得意不得意があるのです。
 下表を参考に、漢方にこだわりすぎず柔軟に対応するのがベストです。



漢方の得意、不得意
漢方が得意とする分野 ●病気といえない病気(半健康)
冷え症、がんこな肩こり、慢性頭痛、慢性便秘、慢性下痢、虚弱体質、立ちくらみ、夏ばて、肌荒れ、のぼせ症、疲れやすいなど
●女性の病気
月経障害、習慣性流産、血の道症、更年期障害、月経困難症
●皮膚科の病気
じんま疹(じんましん)、しもやけ、にきび、アトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、がんこな湿疹(しっしん)
●その他
かぜ、流行性感冒、はしか、慢性胃炎、慢性膀胱炎(まんせいぼうこうえん)、肝臓病、子供の夜泣き、チック、二日酔いの予防
漢方が比較的よく効く病気 ●神経系の病気
自律神経失調症、ノイローゼ、不眠症
●内臓系の病気
胃アトニー、胃下垂、中等度の腎臓結石(じんぞうけっせき)・胆石・虫垂炎の初期、急性および軽症の慢性肝炎
●循環器・呼吸器系の病気
軽度の高血圧症、低血圧症、慢性気管支炎、軽度の気管支拡張症
●その他
神経痛、慢性関節リウマチ、メニエール症候群、へルニア、夜尿症、特発性脱疽(とっぱつせいだっそ)、やせすぎ、腰痛、性欲減退、しみ、中程度の白内障、痛風、仮性近視、軽度の腹膜炎、軽度のバセドウ病、骨膜炎、骨髄炎(こつずいえん)、カリエス、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)
現代医学的治療と併用すると、
より有効な病気
糖尿病、慢性腎炎、ネフローゼ、重度の高血圧症、緑内障、気管支ぜんそく、心臓ぜんそく、心臓弁膜症、軽度の狭心症、軽度の心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳出血や脳軟化症後の半身不随、動脈硬化症

●漢方は速効性もある 漢方はゆっくりと効いてくるといわれるが、証(しょう)がぴったり合えば、急性疾患なら20分で効果の出ることもある。