がん・アレルギー特集 がん
[6]がんの知識と治療
胃がん
胃がんの手術後5年の生存率

原因
塩分の多い食生活や喫煙などが影響。日本でいちばん多い
 最近、胃がんは減少し、また早期であればほとんどの場合は治癒(ちゆ)するようになりました。
 しかし、がんによる死亡者のうち4人に1人は胃がんという、相変わらず日本でいちばん多いがんです。
 胃がんは昔から、日本に多く欧米には少ないので、当初は体質的なものとみられていました。しかし同じ日本人でも、欧米型の食生活が定着した海外の日系人では、大腸がんが多く、胃がんは少ないのです。こうした事実から、体質というより塩分摂取が多く、たんぱく質やビタミン摂取の少ない食生活との関連性が指摘されています。
 ただ塩分そのものに発がん性があるのではなく、発がんのプロモーターとしての働きがあるといわれます。
 また、タバコも胃の粘膜を刺激して、胃がんの原因になることが指摘されています。特に飲酒と喫煙を同時に行うと、危険が増すとされます。


胃壁と胃がんの進行度
胃がんの進行度は、患部の大きさよりも深さによる。胃壁の粘膜下層までのがんを早期がん、さらに胃壁の外側深くに広がると、進行がんという

症状
空腹時の胃痛や食べ物の好みが変わる
 胃がんのごく初期には、ほとんど症状がありません。
 少し進行してくると、特に空腹時に胃が痛んだり、胃が重苦しくなり、もたれた感じがなかなかとれないようになります。そのほか、げっぷや胸やけ、吐きけ、食欲不振などの症状が出てきます。
 これらは、胃潰瘍(いかいよう)や胃炎などほかの胃腸病と共通の症状なので、これだけでは胃がんと判断することはできません。
 症状が進んでくると、絶え間なく胃の鈍痛があったり、食べ物が飲み込みにくくなったり、食べ物の好みが急に変わったりします。特に、油っぽいものよりさっぱりしたものが好きになる傾向があるようです。
 そのほか、体重が急激に減ったり、貧血が加わり、顔色も悪くなります。
 さらに悪化してくると、胃部を手でさわるとしこりを感じるようになります。

検査
確実な診断には、X線・内視鏡検査をし、さらに生検が必要
 胃がんの検査はまず、集団検診や企業などの健康診断などでおなじみの、X線検査から始まります。
 X線検査で異常が発見されると、次に内視鏡検査を行い、直接胃の内部をのぞいて、細部まで徹底的に調べます。X線検査ではよくわからなかったほんの小さな初期がんも、内視鏡なら発見することができます。最近では、X線検査をせず、最初から内視鏡検査をすることも多くなったようです。
 内視鏡は、いまでは直径1cm程度のものもあり、ほとんど苦痛なく飲み込むことができるようになっています。
 また、超音波検査法と組み合わせた超音波内視鏡や、CCDという光センサー素子を使った電子スコープという新しい内視鏡も登場し、非常に鮮明な内部の画像が得られるようになりました。
 内視鏡で発見されたがんらしき影が、がん組織であるか疑わしい場合や、確実にがんを診断するには、胃生検が行われます。
 内視鏡を使って、胃の内部をのぞきながら、内視鏡の先についた鉗子(かんし)で、疑わしい部分の胃の粘膜組織を少しだけつまみとり、それを顕微鏡などで病理学的に検査するのです。

治療
早期手術が主流。極小がんは内視鏡で切除することも
 胃がんの治療は、手術による患部の切除が第一原則ですが、ごく小さい早期がんには、内視鏡でそこだけ切除すれば治癒することがわかってきました。内視鏡的粘膜切除と呼びます。早期がんの20〜30%はこの方法で治療します。
 がんが治癒したかどうかは、手術後5年間生存したかどうかを目安にしています。これによると、早期の胃がんでは、5年生存率が95%以上という、高治癒率を示しています。早期のがんなら、まず手術によって治療できるといってよいでしょう。
 手術では、胃をすべて摘出してしまう場合と、部分的に切除する場合があります。これはがんの進行のぐあいというより、がんができた場所によります。胃の入口、つまり食道近くにできたがんでは、早期であっても全摘出することが多く、胃の出口近くにできたがんの場合には、胃の下半分から4分の3程度摘出します。
 胃の全摘出を行った場合には、食道と十二指腸の間を小腸の一部を切りとったものでつなぎ、それを胃のかわりにします。
 高齢者で抵抗力がない、合併症があるなどで手術ができない場合は、内視鏡治療、抗がん剤による化学治療、放射線療法など、手術以外の治療法を組み合わせて治療します。このうち内視鏡治療は、内視鏡を用いて、患部を切除する方法です。最近では、体力がある人でも、ごく小さながんの場合には内視鏡治療をします。

予後
ゆっくり食事し、手術後も定期検診を忘れず、再発予防を
 胃を全摘出したり、半分以上とってしまうのですから、手術後は食事の量も少なくなり、当然ながらやせていきます。
 体重が減ったからとあせらず、食べられる分だけゆっくりとマイペースで食べていくようにしましょう。
 体力が回復したら酒を飲んでもかまいませんが、少しずつ飲んでいくようにします。
 また、手術後貧血になる場合がかなりあります。胃酸の分泌のバランスが狂うことなどが原因です。貧血症状が出たら、医師に相談して、薬をもらったり注射を打ってもらいます。
 一方、術後の定期検診を忘れないようにしてください。薬の副作用のチェックのほか、再発の予防にも大切です。
 もちろん、術後の人だけでなく、健康な人も40歳を過ぎたら1年に1回は胃がんの定期検診をしましょう。自覚症状のあまりない病気だけに、早期発見・早期治療が頼りです。


●胃がんの後遺症 手術では周囲のリンパ節も切除するため、吐きけ、どうき、めまい、腸閉塞(ちょうへいそく)、視力低下などを起こす例が多い。