がん・アレルギー特集 がん
[2] がんの最新治療
上から、CT、MRl、超音波の各検査

早期ならば百パーセント治る
 外科治療などの治療法の進歩によって、がんも早期に発見できれば、かなりの確率で治癒(ちゆ)できるようになりました。
 しかしがんは、早期にはあまり自覚症状がない場合が多く、症状が出てきてからでは、すでに手遅れのこともあります。
 がんを克服する手段は、現在のところ検診による早期発見しかないといってよいでしょう。
 最近では、治療法だけでなく検査法や診断法も技術が進み、より簡単な方法で、確実な診断ができるようになっています。
 35歳を過ぎたら、少なくとも年に1回は定期検診を受けておきましょう。

画像診断の技術進歩で極小がんも発見可能に
●X線検査
 いわゆるレントゲン撮影。胃がんや肺がん、食道がん、喉頭がん(こうとうがん)など多くの検査に使用します。
●内視鏡(ファイバースコープ)検査
 チューブの先にのぞき鏡をつけたもので、消化器や気管支に差し入れて、直接内部を見ることができます。この開発技術では、日本は世界のトップレベルにあり、食道がんや胃がん、肺がん、大腸がんなどに使われています。
●CT(コンピューター断層撮影)検査
 X線撮影の結果から、コンピューター処理によって得た断面画像を用いて診断する方法で、直径3mmのがんも発見されています。
 肝臓がん、胆道がん、膵臓がん(すいぞうがん)、脳腫瘍(のうしゅよう)、卵巣がんなど、内視鏡などで外部から直接検診できない部位の検査に利用します。
●MRI(磁気共鳴映像)検査
 磁場での高周波電流に対する原子の共鳴現象を利用し、体内のようすを画像化する検査法です。
 細かな病変が明瞭(めいりょう)にわかり、脳腫瘍や腎臓がん(じんぞうがん)の場合などに用いられています。
●血管造影法
 がんの疑いのある臓器に流れる動脈に造影剤を注射し、X線撮影する方法です。肝臓がん、胃がん、膵臓がん、肺がんなどに使われています。
●細胞診・生検(組織検査)
 胸水や腹水、がんの擦過物(さっかぶつ)などに含まれる剥離(はくり)した細胞や、がんの疑いのある部位の組織をとり、顕微鏡などで検査する方法です。胃がん、肺がん、食道がん、子宮がんなど多くの検査に役立ちます。
●血液・尿の検査(生化学検査)
 がんができたことで起こる生化学的な変化を、血液や尿などを調べることでとらえる方法です。
 たとえば、血液から一定以上のα−フェトプロテインというたんぱく質が検出されると、肝臓がんの疑いが濃いとされます。
●その他の検査法
 一般によく用いられる超音波(エコー)検査、ラジオアイソトープを投与して放射能分布を測定して診断するシンチグラム、乳がんの診断に用いられるマンモグラフィー(波長の長いX線による撮影)、体の表面の温度分布をみることで四肢や血管のがんを検査するサーモグラフィー(温度記録法)、大腸がんの目に見えないわずかな出血を検査する便潜血反応検査などがあります。


最新療法の登場で治療成績が確実に向上
 がん治療は、従来からの外科治療、抗がん剤などによる薬物療法、放射線療法に加え、最近では温熱療法など新しい治療法が登場し、治癒率(ちゆりつ)の向上に一役かっています。
 これらの治療法は、がんの種類や状態、体力の有無など個人の状態によって、単独で用いられたり、併用されたりします。
●外科療法
 手術による患部の除去は、白血病以外のがんには最もよく用いられます。早期であれば、手術だけで95%以上治すことができます。
 外科治療の最近の傾向は、患部をなるべく小さく切除することです。以前は再発を防ぐために、患部をなるべく大きく除去するのが常識でしたが、現在では、健康な組織をたくさん切ってしまうことへの疑問や反省が生まれています。
 たとえば肺がんでは、これまでがんにおかされた側の肺はすべて摘出していましたが、最近では患部をもつ肺葉だけ切除し、健康な肺葉は残して気管支とつなぐ手術が行われるようになりました。
 また、社会復帰後の精神的負担を軽減し、より楽しい生活が得られるようにとの配慮もされはじめています。乳がん手術では乳房を切除しますが、そのままでは心理面での問題があるため、今では背中の筋肉を利用して胸のふくらみをつけるなどの工夫がされています。
●薬物療法
 白血病など手術による治療のできない場合や、手術後も転移や浸潤(しんじゅん:主病巣から周囲の正常な細胞にがんが広がること)を起こしているときなどには、薬物療法が行われます。
 抗がん剤は、がん細胞を攻撃して殺すもので、アルキル化剤、代謝拮抗剤(たいしゃきっこうざい)、抗がん性抗生物質、植物アルカロイドなどの種類があります。
 薬物療法は、白血病や小児がんなどにはたいへん高い効果を示し、また絨毛がん(じゅうもうがん)や睾丸腫瘍(こうがんしゅよう)などではほとんど薬だけで完治できるようになっています。
 しかし弱点は、がん細胞だけでなく健康な細胞にも影響を与えるという副作用があることです。
 そこで最近では、免疫抗体反応を利用したミサイル療法という、がん細胞だけを狙い撃ちにする方法が研究されています。まだ開発段階ですが、将来の薬物療法として期待されています。
 また、薬物療法は白血球の減少という副作用があり、大量の薬を投与できない実情があります。これに対しては、私たちの体にあるCSF(白血球増加因子)という物質を遺伝子工学で大量生産して投与し、白血球減少に対処することが考えられています。
●放射線療法
 病巣が手術できないほど深い位置にある場合や、喉頭がん(こうとうがん)、舌がんなど、手術をすると発声や味覚などの機能損傷が起こる場合、あるいは手術後の再発防止などに用いられます。
 放射線療法は、X線やγ線(ガンマせん)などの放射線を照射し、そのエネルギーでがん細胞を破壊する方法ですが、周囲の正常細胞も影響を受け、脱毛やただれ、潰瘍(かいよう)などを起こすことがあります。
 そこで現在では、より集中的に照射することのできる陽子線やネオン粒子などの新しい放射線療法が開発され、研究中です。
●免疫療法と内分泌療法
 異物を排除しようとする体の免疫抗体反応を利用して、がん細胞を攻撃するのが免疫療法です。インターフェロンなどが、それにあたります。副作用のない注目の療法ですが、まだ実用化されているものは少ないのが現状です。
 内分泌療法は、体のホルモン環境を変えてしまうことで、がん細胞の発育を止める方法です。乳がん、子宮がん、前立腺がん(ぜんりつせんがん)などに有効です。
●温熱療法(ハイパーサーミア)
 42度以上の熱に弱いがん細胞の性質を利用し、正常細胞に影響を与えない程度の熱を体に加えて治療する治療法です。難治性のがんや進行がんへの応用に、主として放射線治療と併用されます。
●集学的治療法
 基礎から臨床までの各専門医が結集し、総合的な見地から最適な治療を行い、最大の効果を上げようとする治療法です。各治療法の併用・複合により、総合的に治療することも含まれます。
●末期がんのペインクリニック
 進行したがん患者にとって、最もつらいのは体の各所にあらわれる痛みです。命尽きるまで、せめて痛みなく暮らせないものか、こうした考え方から生まれたのがぺインクリニック、つまり鎮痛のための治療です。
 現在は局所的な鎮痛と同様、全身的な鎮痛にも重きがおかれ、痛みの程度によって、アスピリンなどの非アヘン系鎮痛薬や、モルヒネなどアヘン系の鎮痛薬が用いられています。
 投与量や間隔など医師による正しい管理のもとで使用すれば、麻薬による中毒症状の心配はありません。


X線の被曝量(ひばくりょう)が極小のコンピューテド・ラジオグラフィーによる診断
CT検査の一種で、特殊な材料をぬったプレート上に記録された画像情報をレーザーで読みとり、コンピューターで解析処理する技術。鮮明な画像が得られ、X線の被曝量も10〜20分の1ですむ。集団検診では、乳がんや胃がんの場合に利用される。写真は胃がんの画像。



CT検査による肺がんの画像
肺がんは、がんのなかでもことにCT検査によって解析がしやすい。3〜5mm程度の小さなものまで見つけることができる。写真の白い部分ががん。

がん細胞が分泌する特有物質、腫瘍マーカーも診断の対象に
 がんができると、腫瘍マ一カーと呼ばれる、そのがん細胞特有の物質を分泌することがある。そのため、血清の中の腫瘍マーカーの量を測定することで、がんの有無やがんの部位を知ることができる。また、治療効果の測定や再発の早期発見にも利用できる。
現在のところ、下のような腫瘍マーカーがすでにほかの検査と併用して臨床応用されたり、検討されたりしている。より多くの腫瘍マーカ−の発見を期待したい。

●現在、臨床で用いられているマーカー
[1]ニューロン特異エノラーゼ
[2]α−フェトプ口テイン
[3]CA19−9
[4]がん胎児性抗原(CEA)
[5]絨毛性ゴナドトロピン
[6]CA125
●これから有望視されるマーカー
[7]NCC−ST−194
[8]NCC−ST−439
[9]ガストリン放出ペプチド



乳がん初期に威力を発揮するマンモグラフィーによる診断
ふつうよりも波長の長いX線を使用したX線の乳房の撮影を、マンモグラフィーという。乳がんの初期など、従来のX線には写らない小さながん組織の影も、小さい石灰化の像の存在で発見できる。左上は、乳がんの超音波画像。


●内視鏡利用のがん治療 内視鏡から患部にレーザーを照射して治療する。同様に、抗がん剤などを局所的に打つことも検討中。