基礎知識編 PART1 漢方療法入門
体力(虚実)の見分け方
証とは
 漢方の処方をするとき、「証(しょう)を決める」とよくいいます。この証とは、さまざまな自覚症状や外見からわかる症状を組み合わせたパターンと考えてください。
 証と薬がぴたりと合えば、劇的に治ります。証を正しく把握することが、漢方治療では大切です。

実証と虚証
 体力の充実した状態を実証、反対に充実していなかったり病的に低下している場合を虚証といいます。体力といっても、あくまで質的なものをさしているので、実証なら健康、虚証なら病気というわけではありません。ただ本書ではわかりやすく、実証を「体力がある状態」、虚証を「体力がない状態」としてとらえています。
 虚実の判定は、専門医は腹に弾力(腹力)があるかどうかなどで診ます。しかし腹力の判定はむずかしいので、一般の人は、下の図のようにして筋肉の感触を腹力判定の目安にしてください。

体力の判定1 手で見分ける

体力がある=実証
手を強く握りしめ、親指と人さし指のつけ根にある筋肉を、反対側の手の人さし指で押してみる。するとはりつめたような、力強い弾力性を感じるはず。腹を押してみたり、脈を押してみて、これと同じような弾力性が感じられるようならば、あなたは実証


体力がない=虚証
手を開いて、やはり親指と人さし指のつけ根の筋肉に触れてみると、今度ははりがまったくなくフニャフニャと頼りなく感じられる。同様の弾力性の弱さを、腹や脈にも感じる場合には、あなたは虚証と判断できる


体力がふつう=虚実間
ゆるく指を曲げて手を握りかげんにし、親指と人さし指のつけ根の筋肉にさわってみる。このとき、実証のような力強いはりもなく、かといってフニャフニャした頼りなさもないといった感触があるはず。これと同様の感触を、腹や脈に感じる場合が、虚実間

(注)体力がはっきりしないときは、体力のない人向きの漢方薬から試してみることが原則。体力のない人が実証の薬を服用すると、ときに発汗や下痢が止まらなくなり、大事に至ることがあるので要注意

体力の判定2 体全体で見分ける

判断の基準 体力がある(実証) 体力がない(虚証)
体格 体全体の外観 がっちりした体つきで、見るからに頑丈そう やせていて、弱々しい感じがする
舌の乾湿と舌苔(ぜつたい) 乾燥しており、舌苔は厚い 湿潤で、舌苔はないか薄い
姿勢 立ったり歩いたりしているときのようす 背すじも伸び、しゃんとした感じがする 前かがみの姿勢になりがち
脈に触れたときの感触 力強く弾力性のある感じ 脈の強い力を感じられない
声の大きさや、はり はりがあり、大きい 小さな声で、はりがない
急性疾患の初期 汗が出ない 汗がよく出る
皮膚 つやや色調 光沢や潤いがあり、血色がよい。赤黒く脂ぎっているのは、強い実証 乾燥し、ひび割れができたり荒れており、青白い
胃腸 体質的な強さ ふだんから丈夫 ふだんから弱い
つめ 光沢や色 表面がなめらかでピンク色 表面が波うっていたり、縦や横にすじが入っている
尿 尿の回数 回数が少ない 回数が多い
便 便通の傾向 便秘しやすい 下痢しやすい
月経 月経の時期や出血量 始まる前に痛み、出血量は少ない 月経中に痛み、出血量は多い

●子供の飲む薬の量 乳幼児は大人の4分の1、5歳児は3分の1、10歳児は2分の1、小学校高学年から中学校低学年までは3分の2。