国民の3人に1人はアレルギー?
最近、春になるとテレビやラジオで「スギ花粉情報」が放送され、花粉アレルギーの人たちに注意をうながしています。それほど花粉症が日本全国に蔓延(まんえん)しているという証拠でしょう。
花粉症だけでなく、アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそく、食物アレルギーなどのアレルギー性疾患は、このところ増加の一途をたどっています。
ある病院の耳鼻咽喉科(じびいんこうか)を訪れるアレルギー性疾患の患者は、ここ10年間で3倍にふえたとの報告もあります。また、気管支ぜんそくの発生率は、40年ほど前には国民の1%だったのが、最近では3〜5%前後にも上昇しています。
これらのデータを総合すると、現在アレルギー性疾患の患者は、病院を訪れる人が国民の10人に約1人、病院に行くほどではない人も含めると、3人に1人ぐらいではないかと推測する人もいます。
経済の高度成長とともに増加したアレルギー
アレルギーという言葉自体が日本で一般に知られるようになったのは、昭和30年代のことでした。その後日本経済の高度成長と歩調を合わせて、急速に増加しています。
アレルギーの症状自体は、古代エジプト時代の記録にもみられます。それほど古い病気がなぜ、現代病あるいは文明病といわれるほど増加しているのでしょう。
はっきりとした原因はわかっていませんが、食生活や生活様式の変化、大気汚染、化学製品の台頭、ストレスの多い生活などが影響しているものと考えられています。豊かな物質生活を営む現代文明が、アレルギーと密接な関係をもっているのは確かなようです。
重症化するアレルギー性疾患
アレルギー性疾患の急増とともに心配されるのが、症状の複雑化や重症化です。
たとえば食物アレルギーであれば、かつての3大アレルギー源である卵、牛乳、大豆から多種多様な食品に広がる傾向があります。
また重症化では、ぜんそくの発作の回数がふえてきたり、発作で死ぬ人がふえていることが、世界的に問題となっています。また、今までは鼻水やくしゃみ中心だったアレルギー性鼻炎が、のどの疾患まで伴うようになった、などの報告もあります。
すなわちアレルギーは現代病として大きな問題を含んでいるといえるでしょう。
アレルギーの起こるしくみ
アレルギーを起こすもとになるアレルゲンが体内に入ってくると、抗原提示細胞で処理され、その細胞からサイトカインなどとよばれる一連の物質が出て、マスト細胞、リンパ球、好酸球など、それぞれからも、いろいろな種類のサイトカインを出し、相互に集まったり、刺激する物質を出す。からだはそれらに対し抗体をつくったり、気道の炎症、浮腫、けいれんなどを起こし、ぜんそくや皮膚ではじんま疹(じんましん)や皮膚炎などを起こす。
アレルゲンが体に侵入すると、リンパ球が免疫グロブリンE(IgE)という抗体をつくる。免疫グロブリンEは、血液によって気管支や鼻の粘膜などに運ばれ、そこでマスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる丸い細胞の表面にくっつき、再び侵入してきたアレルゲンをつかまえる。その際、マスト細胞がヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出するしくみになっており、この伝達物質が、気管支であれば筋肉の収縮や粘膜のむくみ、炎症などをうながしてぜんそくの発作を引き起こす。同様に皮膚であれば湿疹やじんま疹を、鼻の粘膜ならくしゃみや鼻づまりなどを起こすとされていたが、最近では、これ以外にリンパ球や好酸球などの役割が重要であることがわかり、それらから出るサイトカインや炎症を起こす化学物質などのために、症状を起こすことがわかってきた。
|