現代医学

病気編 脳・脊髄・神経の病気
現代医学でなおす
●髄膜炎  ●パーキンソン病  ●進行性筋ジストロフィー症  ●顔面神経まひ  ●多発性神経症
〈コラム〉パーキンソン病の新しい治療法

●髄膜炎
 脳や脊髄(せきずい)をとりまいている髄膜(ずいまく)に、炎症が起こるのが髄膜炎です。
原因 病原体の感染によって起こります。病原体の種類には、化膿菌(かのうきん)、結核菌、ウイルス、真菌、梅毒のスピロヘータなどがあります。
 これらの病原体が血液に運ばれたり、あるいは髄膜の外側にある骨の破壊部から直接、髄膜に入り込んだりして、髄膜炎を引き起こします。
 化膿性髄膜炎は、肺炎双球菌、連鎖球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、大腸菌などが原因になります。肺炎、中耳炎、蓄膿症(ちくのうしょう)、骨髄炎(こつずいえん)などの炎症がきっかけとなることもあります。
 結核性髄膜炎は、結核菌が原因です。
 ウイルス性髄膜炎の原因になるウイルスは、インフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹(ましん:はしか)ウイルス、耳下腺炎(じかせんえん:おたふくかぜ)ウイルスなどです。
 真菌とはかびのことで、クリプトコッカスや、肺などの臓器に巣くっていたカンジダなどから起きるのが、真菌性髄膜炎です。
症状 激しい頭痛と、吐きけや嘔吐(おうと)が初期の代表的な症状です。
 炎症が広がるにつれて、後頭部から首にかけて硬直(こうちょく)がみられ、首すじがつっぱって、首が曲がらなくなります。さらに、脳にまで影響が及ぶと、手足のけいれんや軽いまひがあらわれます。意識がぼんやりしたり、錯乱や昏睡(こんすい)などの意識障害が起こったりすることもあります。
 原因となる病原菌の種類によって、熱の出方や病状の進行のしかたが違います。
 化膿性髄膜炎は、寒けや震えとともに、突然39〜40度の高熱が出ます。化膿性髄膜炎は、ほうっておくと、たいへん危険な状態になります。
 結核性髄膜炎の場合は、微熱が2週間ほど続いたあとに、しだいに高い熱が出ます。さらに意識障害も起こって重症となります。
 ウイルス性髄膜炎は急性に起こります。梅毒性髄膜炎は、熱が出ても微熱です。ときには熱の出ないこともあり、あまり重い症状はみられません。
診断 検査は、脳脊髄液の中の細胞の数や種類を調べ、糖の濃度を測るほかに、脳脊髄液を培養したり、沈渣(ちんさ)を染色したりして、原因菌が何かをつきとめます。ウイルス抗体の測定も必要です。
 化膿性髄膜炎や結核性髄膜炎が疑われるときには、培養の結果を待たずに、すぐに治療を始める必要があります。
治療 抗生物質や抗結核薬、抗真菌薬の投与が効果的です。原因菌に合ったものを使えば、より順調に回復します。
 しかし、病気が進行してからでは治りにくく、脳や神経のまひのような後遺症が残ることもあります。早期に治療を開始することが大切です。

パーキンソン病の起こるしくみ
黒質が変性し、消失するのが、パーキンソン病の始まり。黒質から線条体へ送られるドパミンの量が減るため、運動神経が正常に働かなくなる

パーキンソン病の人が震える手でうず巻きを描くと、上図のような線になってしまう

●パーキンソン病
 イギリスのパーキンソンという人が発見した病気で、手足に運動障害が起こります。
 日本では、10万人のうち約100人にみられ、そのうち80〜90%以上が50歳以降に発病しています。高齢化が進むにつれて、患者がふえることが予想されます。しかし、40歳以下の発病も7〜8%あるので、いちがいに老人の病気と決めつけることはできません。
原因 神経系統のうちの、筋肉の運動や緊張を無意識に調整する働きのある錐体外路系(すいたいがいろけい)に異常が起こり、そのためにいろいろな症状があらわれます。
 この異常は、錐体外路系の黒質から出て線条体にいたる神経の障害のために、そこでつくられるドパミンという物質が、減少することによってもたらされます。
症状 パーキンソン病の主な症状は、次の4つです。
●手足の震え{振戦(しんせん)} 一般に片側の手から始まり、同じ側の足、反対側の手、足と広がります。精神的に興奮すると、無意識に震えが起こりやすく、本人が気づいたり、意識して動いたりしているときは震えません。やがて病気が進行すると、眠っているとき以外は、いつも震えているような状態になることがあります。手が震えるとき、親指とほかの指の先端をすり合わせるような動きになるのが特徴です。
●筋肉のこわばり(筋固縮) 筋肉がかたくなり、進行すると、関節が変形してしまうこともあります。
●無表情・緩慢な動作(無動) まばたきが少なくなり、表情に変化がなくなります。動作の始まりや動作そのものが遅くなります。最初の一歩が踏み出せずにすくんだり、初めの一声が出せなかったりします。話し方も単調でボソボソした感じになります。
●姿勢保持と歩行の困難 上半身が前かがみになり、ひじやひざが軽く曲がった姿勢をとるようになります。歩くときもこの姿勢で、小さな歩幅で小刻みに進みます。軽く突かれただけでも踏みとどまれずに突進したり、方向を変えようとしてころんだりします。
 震え、こわばり、無表情、無動といった症状は、早い時期からみられます。病気の進行はゆっくりですが、姿勢保持や歩行の困難が、しだいにあらわれます。
治療 L-ドーパという薬を使う治療が効果を上げています。L-ドーパは、欠乏したドパミンを補う働きをして、神経伝達物質のバランスを正常にもどします。
 この病気の症状に関係がある神経伝達物質には、ドパミンのほかにアセチルコリンという物質があり、正常時は両者のバランスが保たれています。ところが、パーキンソン病になるとドパミンが減り、バランスがくずれるのです。そこで、アセチルコリンのほうを少なくするための、トリヘキシフェニディルのような抗コリン剤を使う治療が行われることもあります。
 ブロモクリプチンという薬は、ドパミンが作用する神経細胞を刺激することにより、ドパミンが作用したのと同じ効果を上げます。
 薬での治療では症状が抑えられない場合や、薬が飲めないほどの胃腸障害がある場合には、手術を行うこともあります。
 手術では、頭にあけた小さな穴から微小電極のついた針を入れ、運動障害を起こしている神経細胞を電気で凝固させます。これを脳の定位手術といいます。出血も少なく、正確な技術で慎重に行えば、副作用もなく安全な手術です。しかし、薬で効果があらわれている場合は、あえて手術をする必要はありません。
生活上の注意 心がけたいのは、規則的な生活をすることと、過労を避けることです。ただし、あまり行動を制限するのはよくありません。体は適度に動かすほうがよいのです。ほかの病気にかかっても、あまり寝込まないようにします。
 パーキンソン病は完全には治りませんが、寿命にはほとんど影響がありません。気持ちを明るく、意欲をもって生活するように心がけます。家族や周囲の人も、本人を励まし、ストレスや不安をとり除いてあげるように気をくばりたいものです。

進行性筋ジストロフィー症の特徴

●進行性筋ジストロフィー症
 ミオパチー(筋肉障害)の代表的な病気で、筋肉がだんだん萎縮(いしゅく)してくる病気です。遺伝によって起こります。
 遺伝の形式、筋肉の萎縮があらわれる部位、病気の進行のしかたによっていくつかの種類に分けられます。
デュシャンヌ型筋ジストロフィー症 母親を介して男の子だけにあらわれるタイプ(伴性劣性遺伝)で、最も多くみられます。2〜5歳の間に発病します。初期症状は、歩き方がおかしい、走れない、立ち上がるとき力が入らない、などです。
 筋肉の萎縮は、初めは肩と腰にみられ、ふくらはぎの筋肉は肥大します。進行につれて萎縮と脱力が広がり、ほとんどが10歳までに歩けなくなり、最終的には手や足も動かせなくなります。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー症 優性遺伝で、遺伝子をもった家系では、親子代々、約半数に男女の別なく起こります。6〜20歳の間に発病します。
 顔面、肩、上腕の筋肉が萎縮します。顔は無表情になって、目や口の開閉ができなくなり、腕も上がらなくなります。
肢帯型筋ジストロフィー症 多くは劣性遺伝による病気で、男女ともに起こり、10〜40歳の間に発病します。肩と腰の周囲の筋肉が萎縮します。
先天性筋ジストロフィー症 生後2〜8か月で発病します。全身の筋肉がぐにゃぐにゃしてやわらかく、立ったり、歩いたりはできません。多くの場合は重症心身障害児で、精神薄弱とてんかん発作を伴います。
検査と治療 症状と血清の検査と家族歴で、ほぼ診断がつきます。しかし、くわしく調べるために、筋肉を一部とって顕微鏡で見る筋生検や、筋電図検査も行います。
 現在のところ有効な薬や治療法は見つかっていません。寝たきりになるのを防ぐために、リハビリテーション設備のある療養所も設置されています。家庭でも、運動機能訓練などを続けるなどの努力が必要です。

●顔面神経まひ
 顔面神経がまひすることにより、顔の筋肉の運動まひが起こる病気です。
原因 はっきりしたことは、わかっていません。
 急に片側の顔面筋肉のまひが起こってくる、ベルまひという病気があります。疲労が重なったときや、風や冷房などで顔の片側だけが冷やされたときに、発病することがよくあります。
 ベルまひに似た状態が、ほかの原因で起こることがあります。比較的まれですが、耳たぶや内耳(ないじ)にできた帯状疱疹(たいじょうほうしん)に伴って、その側の顔面のまひ、めまい、耳鳴りが起こることもあります。
 また、外傷による顔面神経の損傷や、腫瘍(しゅよう)や動脈瘤(どうみゃくりゅう)による顔面神経の圧迫などが原因になることがあります。
症状 まひは、ふつう片側だけに起こります。まひした側の表情筋がゆるんでしまうので、顔全体がゆがみ、まひしていない側にひきずられたようになります。表情が消え、ひたいにはしわが寄らなくなります。
 口の片方が下がって閉じられなくなるので、食べ物やよだれなど、口の中のものが出てしまいます。まぶたも完全には閉じることができず、閉じたつもりでも白目が見える状態になります。そのために、角膜が傷つきやすくなるので、注意しなければなりません。
治療 ベルまひは、発病してから2〜3日後に、いちばんひどい症状があらわれます。ふつうは、その後数週間で自然に治ってしまいます。軽いものなら1週間、遅くて1か月ほどたてば、後遺症が残るか、完治するか、だいたいの見通しがつきます。
 発病してすぐは、顔を冷やさないようにします。寝込む必要はありませんが、無理をせず体を休めるようにします。下がった口角を、ばんそう膏(ばんそうこう)で引っぱってとめるのもよい方法です。
 急性期には、できるだけ早くステロイド剤やビタミンB複合剤などを服用します。急性期には交感神経ブロックも有効です。回復期には、マッサージや電気治療でも効果があります。
 マッサージは家庭でもできます。朝夕30分〜1時間くらい、目のまわりやひたいの筋肉を、手で円を描くように回しながらマッサージします。まひしている口角を引っぱり上げるようにするのも効果があります。
 角膜が傷つくのを予防するため、眼帯をしたり、点眼薬を使って乾燥を防いだりします。
 帯状疱疹が原因の場合は、回復に時間がかかり、まひもある程度残ってしまうことが多いようです。

●多発性神経症
 広い範囲の末梢神経(まっしょうしんけい)に障害が起こる病気です。
原因 明らかな原因としては、農薬や化学薬品などの中毒、薬物の副作用、長年の多量飲酒、ビタミンの欠乏や悪性貧血、糖尿病などの代謝異常、全身性の疾患、感染症、アレルギーなどがあります。
 急に起こり、神経根部まで広くおかされてくるものは、特にギラン・バレー症候群と呼ばれています。
 はっきりした原因はなく、遺伝によって起こるものもあります。
症状 病気の進み方は原因によって異なります。ギラン・バレー症候群は急性型で、糖尿病やアルコールによるものは、慢性的に進行していきます。
 手足の先のほうから左右対称に症状があらわれるのがふつうで、しびれたり、感覚が鈍くなったりします。
 そして、ついには筋力がなくなり、筋肉の萎縮(いしゅく)やまひも同時に起こります。
 これらの障害はしだいに広がって、全身に及ぶようになります。
 感覚の鈍り方がひどくなると、自分の足がどこにあるかわからなくなります。そのため、歩き方がふらふらしてきたりします。
 ギラン・バレー症候群では、顔面神経まひが起こることがあり、タリウム中毒では視力低下があらわれます。
 またギラン・バレー症候群では、3人のうち2人は、まず軽い発熱、頭痛、のどの痛み、または下痢が数日続きます。その後1週間ほどしてから、急に手足に力が入らなくなる、という発病のしかたをします。
 進行して呼吸筋や脳神経がまひするようになると、たいへん危険な状態に陥ります。
治療 原因がわかっている場合は、原因となった病気を治療したり、中毒を起こした物質をとり除いたり、原因となった薬物の使用を中止したりします。ビタミン欠乏によるものは、欠乏していたビタミン剤を飲むことで、かなり効果が上がります。
 ギラン・バレー症候群の急性期には、血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう)を行うことが有効です。これまでよく使われたステロイド剤は、本当に効くかどうかが、はっきりしないと言われています。
 重症になると、体の上のほうまでまひが広がります。そのために、呼吸まひが起こった場合には、人工呼吸器を使っての呼吸管理が必要になることもあります。
予後 時間はかかりますが、ある程度進行してからでも治る病気です。数年間かかって末梢神経の機能が回復することもあるので、治療は根気よく続けることが大切です。
 ギラン・バレー症候群は、多くの場合、数か月から半年ほどで治ります。早期に治療を始めれば回復はもっと早くなります。
 後遺症を残さないように、リハビリテーションを行います。筋力の回復の程度に合わせて、運動量を調節しながら気長に続けます。
 しかし、なかにはかなり強い後遺症を残す人もあり、また重症の場合、急性期の治療が十分にできないと、死亡することもある病気です。

●筋ジストロフィー症の治療態勢 厚生省の国立療養所のうち約20か所に、専用のベッドが約3000あって、設備も充実している。