現代医学

病気編 循環器の病気
現代医学でなおす
●心臓弁膜症  ●心内膜炎  ●心筋炎  ●突発性心筋症

心臓の弁膜(上から見たところ)
三尖弁は3枚、僧帽弁は2枚の弁膜からできている。大動脈弁、肺動脈弁は同じ構造で、ポケット状の3個の弁膜がある。最も故障が多いのは僧帽弁

心臓の断面と心膜・心筋
心臓の壁は主に筋肉からできている。外側から心外膜、心筋、心内膜の3層で、さらに心臓全体は心嚢(しんのう)という袋に包まれている

●心臓弁膜症
 心臓は全身に血液を送るポンプの役割を果たしています。左右の心房と心室の間にはそれぞれ三尖弁(さんせんべん)と僧帽弁(そうぼうべん)、心室から動脈に通じるところには大動脈弁と肺動脈弁があり、これら4つの弁が血液の逆流を防いでいます。
 これらの弁の開閉機能に異常が起こり、血液の循環が正常に行われなくなるのが、心臓弁膜症です。
原因 この病気には、先天性と後天性の2種類があります。先天性の場合は、弁の奇形が原因です。後天性のものの多くは、リウマチ熱による心内膜炎が原因です。
症状 病気が軽いうちは自覚症状がほとんどないことが多く、徐々にあらわれる症状も、心臓弁膜症に特有のものではありません。
 病気の起きている弁の種類や程度によって異なりますが、一般的には次のような症状があります。
 まず、体を動かしたときに、どうきや息切れを感じるようになり、疲れやすくなります。進行につれて、安静時にもどうきがしたり、息が苦しくなったりします。また、せきやたんが出るようになります。
 先天性の場合は、肺動脈が狭くなっています。重症の場合は、生後すぐに右心不全を起こし、チアノーゼ、肝臓の腫(は)れ、腹水などがみられます。軽症の場合は、無症状で20歳前後まで過ごし、その後、どうきや息切れなどの症状が出てくることがあります。
 後天性の僧帽弁膜症では、左心房の血液が滞るために血液のかたまり{血栓(けっせん)}ができ、血管がつまる塞栓症(そくせんしょう)を起こします。脳の塞栓症では、言語障害、意識不明、さらに半身不随が起こったりします。
 大動脈弁膜症では、どうき、息切れのほか、めまいや脳貧血を起こしたり、全身のむくみやチアノーゼがあらわれたりします。
治療 薬物療法と手術療法があり、病気の状態によって、適切な治療が行われます。
 用いられる薬はジギタリス、利尿薬、ACE阻害薬で、どうき、息切れ、むくみなど、心不全の症状が出たときに服用します。
 この病気の人は、細菌感染から心内膜炎を起こしやすいので、けがや抜歯のときなど、細菌感染のおそれがある場合には、予防のために抗生物質が使われることがあります。
 手術では、弁が癒着(ゆちゃく)して狭くなっている部分を広げる方法がとられます。弁の異常がひどい場合は、人工弁を入れる手術が行われます。心臓の手術はたいへん発達してきたので、確実な治療が行われるようになっています。
 症状が軽い場合は、日常生活に注意するだけでよく、特別な治療を必要としません。急な運動、過労、ストレスを避け、タバコもやめます。暴飲暴食や塩分のとりすぎにも注意します。

●心内膜炎
 心臓の壁の内側を覆っている心内膜に炎症が起こるのが心内膜炎です。リウマチ性心内膜炎と細菌性心内膜炎の2つがあります。
リウマチ性心内膜炎 リウマチ熱が原因となって起こる心内膜炎です。
子供から20歳代の若い人によくみられます。
 症状は、リウマチ熱による発熱、関節炎に伴って、頻脈(ひんみゃく)や心臓の雑音などがあらわれます。
 治療は、まず原因となっているリウマチ熱に対して、サリチル酸剤や抗生物質が投与されます。心内膜炎に対しては、ステロイド剤も用いられます。
 回復期には、リウマチ熱の再発を防ぐために、ペニシリンを長期間にわたって使います。病気が長びいたり、再発をくり返したりすると、心臓弁膜症になる可能性が高くなるので、薬は途中でやめないことが大切です。
 症状が激しいときは、横になって安静を保ち、消化のよい食事と食塩の制限を心がけます。
細菌性心内膜炎 原因は、大腸菌、緑膿菌(りょくのうきん)、黄色ぶどう球菌、緑色連鎖球菌などの細菌感染です。また、真菌(かび)やリケッチア(細菌より小さくてウイルスより大きい微生物)など、細菌以外の感染でも起こることがあるので、最近は感染性心内膜炎と呼ばれることもあります。
 心臓弁膜症や先天性の心臓病のある人が、抜歯したり、泌尿器科や産婦人科の手術や検査を受けたり、出産したりしたときに、原因菌が血液中に入り込み、心内膜に付着して炎症を起こします。心臓に異常のない人の発病は少ないのが特徴ですが、老人や、腎不全(じんふぜん)などで免疫力が弱くなっている人は、かかりやすい傾向がみられます。
 症状はかぜに似ていて、38度くらいの発熱が続き、関節や節肉が痛みます。汗が出て、全身の倦怠感(けんたいかん)、寒け、食欲不振を伴います。解熱剤やふつうの量の抗生物質では回復しません。手足のつめの根元がふくらむ「大鼓ばち指」も、この病気の特徴です。
治療 原因となっている菌の種類をつきとめるために、血液培養検査が行われます。原因菌がはっきりしたら、それに対して、最も効果がある抗生物質が選ばれ、投与されます。
 安静と食事の注意を守りながら、最低でも6〜8週間の療養が必要です。急性症状のあるときは床につき、安定してきたら徐々に床を離れる時間をふやしていきます。食事は、やわらかいもの、刺激のないものを中心にして、食塩の量を控えます。

●心筋炎
原因 心臓の壁は3層からなっています。外側の心外膜と、内側の心内膜にはさまれた中央の筋肉組織の層が心筋です。心筋炎は、そこに炎症が起きた病気です。
 原因は、細菌、ウイルス、リケッチア、真菌などの感染、全身性エリテマトーデスやリウマチ熱などの全身疾患です。
症状 症状のあらわれ方は原因によって異なり、まったく症状のないものから、心不全を起こすものまでさまざまです。
 細菌やウイルスが原因の場合は、全身の倦怠感、どうき、不整脈、頻脈などがみられることがあります。ただし症状が持続しないので、見すごされることもあります。
 リウマチ熱からくる心筋炎では、発熱、寒け、のどの痛み、せきなど、かぜに似た初期症状が出ます。進行すると脈が乱れてどうきがしたり、心不全が起こったりします。
治療 細菌やウイルスによる急性心筋炎で、ごく軽症の場合は、無症状のまま自然に治ってしまうこともよくあります。症状が出ているときは、絶対安静を守ります。
 心臓の状態に応じて、利尿薬、強心薬、ACE阻害薬などが投与されます。食事は食塩が制限されます。原因となっている病気を治療するため、抗生物質やステロイド剤を使うこともあります。

●突発性心筋症
原因 突発性心筋症は、心臓の細胞に突然変化が起きて、心臓の筋肉組織の層の厚さに変化が起きる病気です。ほとんどの場合、原因がわかりません。
症状 心臓の筋肉組織の層が厚くなった場合は、心臓の機能が落ち、血液の流出量が減ります。そのためどうき、息切れ、胸痛などが起こります。病態がすすむと、むくみ、呼吸困難などがおこります。
 薄くなった場合も機能が落ちます。血液の流出が十分にできず、心臓内にうっ血してしまい、やはりどうき、息切れが起こります。
 なかには自覚症状がないまま突然死することもあります。
治療 原因不明のため、対症療法と生活指導が中心になります。
 β遮断薬、カルシウム拮抗剤(カルシウムきっこうざい)、強心薬、利尿剤などが投与されます。食事指導も大切な予防治療のひとつです。
 早期発見がたいせつですから、気になる自覚症状があったら、検査をうけるようにしましょう。

血液は1分で全身を回る 動脈血は左心室→大動脈→全身を回って静脈血となり、右心房→右心室→肺→左心房に帰る。この間約1分。